終了のホイッスルとともに倒れ込む選手たち。強固な結束と闘志が観客の胸を打つ

サガン鳥栖
Clip! STADIUM

人口7万人の街のサッカークラブであるサガン鳥栖には、お金がありません。2012年度の人件費は6億1000万円(※)。その額は、J1での優勝経験があるクラブの3分の1程度です。

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お金が無いと良い選手を連れて来れません。となると自分たちで育てなくてはなりません。
ですが、お金が無いと良い選手を育てても、より多く年俸を払えるクラブに獲られてしまいます。

良い選手を売れば、得た移籍金で新たに選手を獲得できます。でも、その選手が結果を残してくれるかどうかは未知数です。

 

※参考:エルゴラッソ Jリーグ選手名鑑2014

 

選手がピッチに倒れ込み、しばらく起き上がれない。

そんなお金のないクラブでは魅力あるサッカーを見せられないのでは? 負けてばかりで応援のし甲斐が無いのでは?

普通に考えたらそうでしょう。でもサガン鳥栖は違います。魅力あるサッカーを見せてくれる上に、どんな強豪クラブにも臆せず立ち向かい、勝利を手にしています。

では、なぜ勝てるのか。

彼らは、お金のあるクラブを打ち破るために、あることをしているんです。その答えは至ってシンプル。

 

走るんです。

 

相手よりも長く走り、11人で12人、13人分の仕事をするんです。ただ口で言うのは簡単です。走ることには苦痛が伴います。試合だけ走れば良いのではありません。練習でも走らなければ、全員が90分間を走り抜くことはできません。サガン鳥栖の選手は走ります。一日2部練、3部練は当たり前。

試合では、全員が同じ狙いを定めて相手選手を仕留め、ボールを奪い、一気に相手陣内へボールを運ぶと3〜4人が相手ゴールへとなだれ込む。なだれ込んでは自陣へと戻り、またなだれ込む、のくり返し。90分間走って走って走り勝ち、相手よりも多くゴールを決めてやっと彼らは報われるのです。

終了の笛が鳴った瞬間、選手がピッチに倒れ込み、しばらく起き上がれないシーンはベアスタではおなじみの光景です。一人でもサボれば、他の選手の走りは無駄になります。ハードワークというチーム方針は、味方を思いやる献身的なプレーなくして遂行できません。

毎試合、並々ならぬ覚悟と強靭な結束が必要不可欠なのです。

 

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たとえ負けてしまったとしても、拍手で健闘を称える

ため息が出るような華麗なプレーなら、テレビやパソコンでいくらでも見ることができます。しかしながら、そんなシーンがほとんど無いにもかかわらず、90分もの間、目が離せない試合というのはなかなか観られるものではありません。

サガン鳥栖の場合、かなりの頻度でそういった試合を観ることができます。それこそが、サガンのサポーターのみならず多くのサッカーファンを魅了する理由。

そしてサポーターは、勇敢な地元クラブを誇りとし、彼らが報われることを願って毎試合毎試合スタンドで声を枯らすのです。たとえ負けてしまったとしても、拍手で健闘を称えるのです。

ファンタジスタや天才ドリブラーがいなくても、サッカー観戦ってこんなにも面白いのか!? そう思い知らせてくれたのが「サガン鳥栖」というクラブでした。

 

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小さなクラブが金持ちクラブを打ち破るという夢

3シーズン目となるJ1での戦いを迎えるクラブにも、たったひとりで試合を決められるような選手はいません。

大当たりだった昨季途中の補強。このシーズンオフでは、そのとき加入した選手のほとんどが残留を決め、クラブはお金が無いながらも、手薄なポジションに、チームの方針に適った選手を新たに獲得しました。(広島→/MF岡本知剛、柏→/MF谷口博之、磐田→/DF安田理大 など)

もしも自分が選手だったらどうするでしょう? サガンのような辛くて泥臭いサッカーをするクラブでプレーするのはちょっと…と思うかな?(笑)

でも実際、これだけ残る選手が多いということは、厳しさと引き換えに得られるものが大きいのだと思います。そしてそれが、お金ではないことは確かです。

 

サガン鳥栖は今、地域に密着したスポーツクラブとして、非常に良い方向に向かっていると思います。

どこかの富豪がクラブを買収した途端、強豪に早変わり、なんていうのはサッカー界ではよくある話。それはそれで成功したと言えるのでしょうが、愛着を失ってしまうファンも少なくないはず。

可能な範囲で着実に力をつけ、ファンを増やすという地道なやり方で、じっくり頂点を目指すサガン鳥栖は、成功に向かっていく過程を見守る楽しさや、小さなクラブが金持ちクラブを打ち破るという夢を提供してくれます。

ピッチ上ではぶっ倒れるまで必死に戦う選手たち。
そんな姿に心を打たれた人々でスタジアムの席は埋まっていきます。

 

クラブと街が、同じ苦しみと快感を共有しながら盛り上がっていく。そんな、「佐賀に“サガン鳥栖”のある風景」を見るのが、僕は大好きなのです。

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